県議会_令和元年

令和元年9月18日代表質問

令和元年9月18日 代表質問答弁

1 県と市町村とのまちづくりについて

県と市町村との連携協定によるまちづくりの現在の状況と、今後どのように進めていこうとしているのかについて伺いたい。

<知事>

本県ではこれまでまちづくりをテーマとした政策がほとんど行われてきませんでした。急激な人口減少、急速な高齢化が進む中、奈良県ではまちづくりとまちのリニューアルが大きなテーマになっていると思っております。委員のご紹介のとおり、地域のまちづくりのテーマはそれぞれでございます。いろいろなテーマがございますが、それぞれに対応して、県が協力して行う仕組みが必要かと思ってまいりました。どのように奈良県のまちづくり、まちのリニューアルを進めようとしているのか、今進んでいるのかというご質問でございました。

本県では、まちづくりにアイデア、熱意があり、その考え方が県と合致する市町村との間で、まちづくりに関する連携協定を結んでおります。この協定は、地域の活力の維持・向上や持続可能で効率的な行財政運営を目的として、それと同じ方向をめざされる市町村への支援と協働の仕組みとして構築しました。「奈良モデル」と呼ばれて、全国的にも注目されている取組となっております。

現在、県内の27市町村とまちづくりの包括協定を締結しております。55地区において県と市町村の職員が知恵を出し合いながら、魅力あるまちづくりに一体的かつ計画的に取り組んでいるところでございます。

具体的なテーマをよくみてみますと、一つは、鉄道駅を拠点にしたにぎわいづくりという観点があるように思います。二つ目は、奈良県が広く持っております社寺・公園などの資源を拠点とした観光振興のまちづくりなどがあるように思います。

地域の特色や資源を活かしたまちづくりの知恵、工夫が、市町村でも行われてきていることがよくわかってきております。

また、県民の方々が安心してくらし続けられるまちづくりとして、高齢者や子育て世帯が地域に活き活きと住み続けられる多世代居住のまちづくりも大きなテーマでございます。ベットタウンとして発展してきました奈良県において、高齢者がその地に取り残されないような目標がいるかと思います。また、県有施設を中心とした、例えば医大隣接の利点を活かした健康増進のまちづくりなどにも、チャレンジする値打ちがあろうかと思っております。

今後とも県としましては、全国各地の先進事例やまちづくりに有効な国施策の情報の提供など、まず知恵を出す部分について様々な支援を行うと共に、引き続き市町村事業への技術支援・財政支援を行って、魅力あるまちづくりを進めていきたいと考えております。

2 中南部地域、東部地域の振興について

(1)先の6月定例県議会で表明された「国体開催に向けた橿原公苑と橿原運動公園においての一体的なスポーツ拠点施設の整備」について、改めて知事の考えを伺いたい。

<知事>

議員お述べのとおり、本県は、スポーツ施設が充分ではありません。また、スポーツ振興施策も今ひとつでした。2巡目の国体開催が2030年頃に迫ってきているなかで、その先の将来を見据えて、県内のスポーツ施設のあり方とスポーツ振興施策のあり方を検討し、推進する必要があると認識しています。この基本的な考え方は、先の6月議会で答弁したとおりですが、この10年間を絶好のチャンスと捉え、スポーツ施設の整備とスポーツ振興施策を大きく進展させたいと考えています。

スポーツ施設の整備について、国体では、第一に、約3万人の規模で開催できる開会式会場が必要となります。また、60から70箇所の競技会場を配置することになります。これらの施設の計画・整備にあたっては、市町村との連携を密にして、中長期的な視野で、県と市町村の役割をしっかりと見据えながら、スポーツ振興施策と合わせ、地域の活性化につなげ、地域間のバランスをとっていくことが重要と考えます。

このような考え方のもと、国体の開会式を視野に入れて、6月議会で、県立橿原公苑と橿原市の橿原運動公園の土地・施設の交換による拠点的整備について申し上げました。また、この交換がなされない場合に備え、その他の場所での開会式場の可能性も並行して考えておく必要があるとお答えしました。他の地域からの陳情書も出されている状況です。

橿原市との土地・施設の交換は、プロジェクト推進のため、望ましい事業手法として提案したものです。このような地域振興の核となる一大プロジェクトは、県と市町村の双方に大きな意味がありますが、今回のような事業をうまく進めるための必要条件は次のように考えています。まず第一は、やはり地元の熱意が必要です。

首長、議会、地域住民の方々のプロジェクトへの理解と情熱が必要です。

次に、地元の熱意に答える形で県がプロジェクトを素晴らしいものにするための知恵をしぼり、汗をかくことが必要となります。

このような形でプロジェクトを進めるためには、県と市町村が同じ気持ちで、同じ方向を向き、市町村からは、県とともに事業を推進するという確実な意思表示をいただく必要があると考えています。このことは、どこの市町村で実施する場合も、必要な条件になると思います。

県としては、約10年後に国体開催が迫っており、開会式の会場となる施設の構想、計画から施工にあてる期間に余裕があるとは言えない状況にあることから、出来るだけ早期に、事業を共に行うことを希望される市町村の熱意と明確な意思を確認しつつ、施設の整備構想をとりまとめたいと考えています。

(2)新駅の設置を含めた、県立医科大学と周辺のまちづくりについて、現在の進捗状況と今後の見通しを伺いたい。

<知事>

県立医科大学と周辺のまちづくりについては、平成24年から、県、橿原市、医大の3者で「医大・周辺まちづくりプロジェクト会議」を設置し、まちづくりの方向や進め方、対象エリア、導入する機能など多岐に渡る内容について綿密な協議を進めてまいりました。

医科大学の新キャンパス整備については、都市計画手続きの事前協議などを順次進めるとともに、施設の配置計画や必要な機能などを検討し、本年3月に「新キャンパス整備基本計画」を取りまとめたところです。これは順調に進んでいると思っております。

一方、病院の近くに新駅を設置する、医大新駅設置については、近鉄との折衝で、八木西口駅の存廃が大きな課題となっております。この課題克服に向け、現在、近鉄と調整を進めているところです。

グラウンド部分の文化財発掘調査については、平成29年度から継続して実施しており、本年10月中に現場での発掘調査が完了し、資料整理を進めていく予定です。また、「医大周辺地区まちづくり基本構想」についても、今年度内策定に向けて、県と橿原市が連携し、取りまとめを行っているところです。

今後も、早期にまち開きができるよう、引き続き橿原市や近鉄、医大などの関係機関と連携し、まちづくりを進めてまいりたいと考えております。

(3)橿原市と高市郡は、従来から結び付きが強い地域であり、将来的に、合併という道に進む可能性も想定され、今から準備を進めていくことも必要と考えるがどうか。

<知事>

平成の大合併の際、全国的な合併促進機運の中で、奈良県でも、合併に向けた取組を支援致しました。その際、橿原市、高取町及び明日香村の組合せもお示ししましたが、合併には至りませんでした。そもそも市町村合併は、それぞれの市町村の住民の方々の意思を市町村自身が民主的基盤の下で判断し、それを尊重されるように進めるプロセスが重要だと考えております。平成の大合併に際しましても、そのようなプロセスの結果、この地域では合併に至らなかったものと聞いております。現在、地域で合併を進めていこうという機運がない中で、積極的に県が推進に向けて関与することは適切ではないと考えております。

合併があまり進まなかった奈良県において、市町村行政の強化・効率化を図る手法として、自治体間の連携をもとにした「奈良モデル」の取組を進めてまいりました。「奈良モデル」の取組は、その効果が目に見える形で現れてきております。住民の方々への効率的で質の良い行政サービスの提供、地域活力の維持・向上につながればいいと思っております。

国においても、平成26年の地方自治法の改正で、新たな連携制度として「連携協約」や、県が積極的に市町村に力を貸すことができる「事務の代替執行」が創設されました。国の考え方も、かつての「合併の推進」の音頭取りから「連携の促進」にシフトしているように思われるところです。このような合併から連携への流れは、まさに本県が取り組んでいる「奈良モデル」の考え方をモデルにされたのではないかと思っております。市町村が持続可能で効率的な行政を推進し、地域活力を維持・向上していくためには、「奈良モデル」を「地方自治の新しい形」として、更に発展させて、良いモデルを作っていくことが、今後も重要であると思います。

改めて考えてみますと、合併はフルの合併もありますが、一部の合併、連合という形もございます。病院業務だけを合併させよう、あるいは、消防だけを合併させようという連合という組織も地方自治法で認められております。連携の場合も近隣と連携するだけでなしに天理市がされているようなゴミの広域な連携という飛び地の連携もございます。また県も関係するような連携、また他の県の市町村とも関係するような連携も今、目に見えてきております。行政区域に囚われない業務を中心とした助け合い、というような方向でございます。さらに3つめは、基礎自治体のフルスペックの業務の見直しを進めてはどうかという議論が進められています。中心市に部分的な業務を差し上げて、それは例えば橿原市でやってくれ、そのほかは、町村でするという考え方もあろうかと思います。これはまだ制度化はされておらないように思いますが、人口が減少する中、市町村の役場の成り手もすくなくなる中、フルスペックの市町村業務というのはなかなかしんどいものでございますが、それが合併したからといって業務が向上するわけでもございませんので、いろいろな知恵がいるように私は思っております。

(4)高取城の整備や、「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の世界遺産登録をはじめとした、中南部地域、東部地域の歴史文化資源の保存と活用に向けた今後の取組について伺いたい。

<知事>

高取城は歴史ある文化資源と認識しております。文化財保存課が知事部局の組織となったことをきっかけに、高取城の整備に力を入れたいと思っています。まず、高取城の整備をどうするのかというスタートの課題があります。高取町の取り組むまちづくりのビジョンの中で高取城をいかに位置づけるのかというのが出発点です。その方向性を高取町と共有することが重要です。そのため、県が高取町、有識者を含めた検討体制を整え、整備の全体像、整備手法、役割分担など整備のあり方の検討を深めてまいります。議員お述べのように、部分的に石垣や道がほったらかし、樹木は伸び放題というような傾向があり、整備を早くしたい気持ちは一杯ですが、全体像を早く考えたいと思っています。県としては、土佐街道を上手く使って、土佐街道と城をつなげるようなまちづくりが望ましいと考えていて、町と協議を進めているところです。

また、世界遺産暫定一覧表に記載されている「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」については、県と橿原市、桜井市、明日香村で構成する世界遺産「飛鳥・藤原」登録推進協議会で取組を進めてきましたが、あまり進んで来なかったような感覚があります。この際、世界遺産を目指そうと一念発起していると言っても良いぐらいの気持ちになっております。令和6年には世界遺産として登録されるようなスケジュール感で取組を本格化していきたいと考えています。

この他、文化資源を活用して地域振興に取り入れるプロジェクトがいくつもございますが、まず、県では、文化財を組み合わせて地域の活性化に結びつけようという「文化クラスター事業」を進めています。現在、奈良公園や平城宮跡において実施しています。文化財関連のイベントをつなげてネットワークにしよう、クラスターにしようというものであります。文化財は組み合わせると宝石になる可能性が十分ありますし、中南部地域にも宝石になる素材が転がっているように思います。この「文化クラスター事業」を中南部地域にも拡大していくことを考えています。橿原考古学研究所や万葉文化館などの施設、地域の社寺が核となり、市町村とも連携した歴史文化資源を活用したイベントのようなイメージを展開してまいります。

なお、橿原考古学研究所においては、所長に就任いただいた、前文化庁長官である青柳所長の広い視点に立脚したリーダーシップを期待して、南部の歴史文化資源の調査・研究・保存・活用の拠点としての機能の強化を考えているところでございます。

また、令和3年度中に開村予定の歴史芸術文化活動の先駆的拠点である「なら歴史芸術文化村」は、本物の歴史文化資源に触れていただくことができる施設でございますが、広域的な活動の拠点となり得る施設と考えており、中南部地域・東部地域へ人の流れを誘導することが図れると考えています。

本年4月に、文化財保存課を教育委員会から知事部局に移管しました。これにより、歴史文化資源の保存と活用の一体化の視点を軸に、県庁内で横断的な政策連携をより一層進め、ひいては中南部地域・東部地域の魅力的な歴史文化資源に触れていただく多くの機会を創出したいと考えています。

3 幼児教育・保育の無償化について

10月から始まる、幼児教育・保育の無償化を円滑に実施していくために、県はどのように取り組んでいるのか。

<こども・女性局長>

幼児教育・保育の無償化を円滑に実施していくためには、実施主体である市町村が制度を適切に運用できるよう、県が支援することが必要です。このため、県では、制度内容や市町村が行う事務についての説明会のほか、内閣府の担当者による説明の機会を設け、制度運用における具体的な留意点等について周知を図ってきたところです。さらに、準備を進める中での課題とその対応方法を市町村間で共有するため、実務担当者会議を開催する等、県と市町村が連携して無償化の準備を進めてきました。

議員お述べのように、認可外保育施設も無償化の対象ですが、保育従事者の配置や安全対策等、質の確保に課題のある施設があり、今後5年間で県の定める「認可外保育施設指導監督基準」を満たすことが必要です。

このため、今年度、県では、全ての施設で立ち入り調査を実施するとともに、長年の保育経験を持つアドバイザーによる巡回指導も併せて実施し、指導監督基準の遵守や安全対策の実施等について助言を行うことにより、質の確保・向上に取り組んでいるところです。また、議員が懸念されている更なる保育需要への対応については、今年度、市町村とともに立ち上げた「待機児童対策協議会」において、市町村域をまたがった施設の空き定員の活用等、広域で取り組むことが有効な事項について協議を行ってまいります。

先般、保護者に無償化の制度内容や手続き、実費負担について十分に周知されるよう、重ねて市町村に働きかけたところでありますが、引き続き円滑な実施が図られるよう、市町村を支援して参りたいと考えています。